体調がすこぶる悪い。
でも病院へ行って、様々な検査をしても体に異常はないと言われる。
これだけ医学が進んだようでも、実はよくあること。もしかすると、検査で原因がはっきりする体調不良の方が少ないかもしれません。
検査で異常が出ない時、病院を変え、とことん原因を調べようとする方もいれば、
この体調不良は「気のせい」や「心の弱さからくる仮病のようなもの」だと感じる方もいるでしょう。
検査で見つかり難い体調不良の原因
原因不明の体調不良で、私がまず疑うのは「膠原病」と「内分泌疾患」です。
両者に共通するのは、すごく体調が悪いのに症状が曖昧で固定せず、専門医でなければ(時に専門医でも)診断がつきにくいことです。
膠原病
膠原病は自己免疫疾患の仲間です。
免疫は本来、外敵である細菌やウイルス、体内にできた異常な細胞(がん細胞)などを攻撃破壊し、体にとって有害なものを排除する、とても重要な働きを担っています。
この免疫細胞が、敵味方の区別を間違えて暴走し、守るべき自分のからだを攻撃して炎症を起こし、破壊してしまうのが膠原病です。
主に関節を攻撃する関節リウマチが有名ですが、免疫細胞が攻撃するターゲットは様々で、皮膚や筋肉、腱などの結合組織、血管、内臓、神経組織などに炎症を起こすものがあり、それぞれの症状が複合して発症することも多く、症状は多様で、診断を難しくする要因にもなっています。
共通する症状は、関節や筋肉の痛み、発熱、倦怠感などが多く、一見感染症にも見えますが、風邪などの感染症のように短期間では改善せず、症状が変化しながら、長期にわたり不調が続きます。
また、侵される場所により紅斑と呼ばれる発疹のようなものが出たり、血管や内臓が侵されれば個別の症状を発症しますが、一見バラバラの症状に見えるため、医者や患者がその根本原因に気付きにくいという点も診断を難しくする要因になります。
ホルモンの異常(内分泌疾患)
ホルモンは自律神経とともに、絶妙な調節により、私たちの体内環境を整えています。
ホルモンはとても微量で作用し、体調に変化を起こしますが、やはり症状が曖昧で、日によっても変化するので、なんか調子悪いけど病気ではない?といった感覚に陥りがちです。
検査だけでは確定しにくい膠原病に比べると、内分泌疾患は血液検査で確定診断が可能ですが、一般的な項目外の、そのホルモンの量をターゲットにした検査をする必要があるため、医者が疑いを持って調べてくれないと異常が見つけられません。
今や国民病とも言える糖尿病も、内分泌疾患の仲間ですが、バセドー氏病や橋本病などの甲状腺機能の異常もとても多く見られる病気です。
体のだるさやむくみ、息切れめまいなど、単なる疲労と区別のつかないような症状が主体になります。
もちろんこれ以外にも原因がなかなか特定出来ない病気はたくさんありますが、どの病気も心身のストレスが発症の最大の引き金であることは間違いありません。
心身のストレスが発症の引き金
内分泌疾患の場合は、ホルモンを補充することで劇的に症状が改善することもありますが、膠原病などは完治が難しく、一生上手に付き合っていく必要がある場合がほとんどです。
また通常の医学的な検査では診断のつけにくい慢性疲労症候群(線維筋痛症)などの患者さんを苦しめる病気もあります。
原因がわからないなら、よけいに休む必要がある
検査で異常が見つかれば、自分も周囲も病気だと認めることができるけれど、診断がつかなければ病気とはみなさない。だから休んだり出来ない?
そう感じる方もいるかもしれません。
でも、考えてみてください。
病名が確定し、それが治療できるものであれば、今患者さんを苦しめている症状は、良くなる可能性が高いです。
でも原因がわからなければ、根本的な治癒に向かうような治療は出来ないのですから、そのままの生活を続けていれば、苦痛が改善する可能性は低くなります。
体の不調の原因が、うつなどの精神的なものでも、特定できない器質的な病気であったとしても同様です。
原因を特定することは改善への大切なアプローチの一つですが、ストレスの多い生活を見直すことが先決です。
体調不良は身体からのサイン
めんどくさい、やりたくない、働きたくないのは心の弱さが原因かもしれませんが、体調が悪いのは、気のせいや仮病ではありません。
体が重くて起きられないのは、「寝ていた方が良いよ」あるいは、「起きるな!」という体からの指示だし、めまいがするのも「今は動かないで」というサインです。
体は必要な時に声を上げているだけで、ものすごく働き者なんです。
気持ちの変化が体調に大きく変化をもたらすことも多いので、気持ちの問題だと考えるのはあながち間違いではありませんが、体調が悪い時に、我慢を続けても良いことは何もありません。
体が文句を言うときは、休むべき時です。
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