痛みを感じると筋肉は縮む
痛みを起こした筋肉は激しく縮み、その周囲の筋肉もついでに収縮する。
筋肉や関節が伸びきってしまうのを防ぐためだったり、攻撃から身を守るためだったりするのだろうが……。
この筋肉の収縮は、身を守るためには役立つが、痛みから逃れたい人には邪魔になる。
なぜなら、筋肉が損傷した場合、何をすれば痛いかと言えば筋肉が縮んだときな訳で、痛いから縮むんだけど、縮むと一段と痛い。
小さな痛みを感知したとき、筋肉が強い収縮を起こす。その結果は激痛だ。
痛みなんてなければいいのにと思っている人は沢山いるだろう。
でも、そんな羨ましい立場の先天的に痛みを感じない無痛無汗症の人は、二十歳まで生きるのが難しいとまで言われている。
怪我をしても気付かず傷口を放置すれば、そこからばい菌が入り敗血症になる。骨折をしても痛くないから平気で動いてしまう。
極端なことを言えば、自分が刺されても気付かない。怖いでしょう?
これでおわかりの通り、痛みは私たちの身体を守るために最も重要な要素で、自己防衛機能として周到に用意された素晴らしい身体の警報システムであり、絶対になくてはならないもの。痛みなくして自分の身体を守ることは出来ないのだ。
痛いからこそ身体の異常に気付くことが出来るし、手当てしたり、休んだり、何かをやりたくてもやれなかったりするのである。(ここ重要)
それでもやっぱり痛いのは嫌だ。警報が出たらきちんと対処するから、これ以上痛くしないで! そんな人にアドバイス。
誰もが経験することだと思うが、多くの筋肉の痛みは、動き始めが最も痛い。でも、ゆっくり用心深く動けば、わりと大丈夫。
同じ動きを何度か繰り返すと、痛みは少し楽になる。
理由は二つ。
第1の理由は、運動というものは、起動時に最大の筋力を要することが多い。起動時にだけ動員される小さな筋肉も結構あるから、強い力を出すために強く収縮せざるを得ない。
2つ目の理由は、この記事のテーマ、筋肉が(正確には、その筋肉を支配している神経が)動き始めの小さな痛みにびびって、急激に必要以上の力で縮むから。
それじゃあどうすれば、この痛みを防げるか?
痛みを防ぐためには筋肉の力を抜く
その1.大事なのは、痛みを感じている筋肉の力をなるべく抜くようにすることだ。どこかにつかまったり、他の筋肉に代わりに頑張ってもらうことにして、痛い筋肉にはなるべく力を入れないようにする。
なぜなら力が入る=筋肉が収縮する→痛む。
と言う図式が成り立つからで、これを解除するには力を抜くしかない。
だから身体に言い聞かせる。「大丈夫。わかったから、ちゃんと大切にするから怖がらなくて良いよ」心の中で身体に声をかけ、警戒を解いてやらなければならない。
そんなことは難しいと思うかもしれない。もちろん出来るときと出来ないときはある。でも、それを絶対に成し遂げねばならない時もある。ストレッチをするときだ。
ストレッチについては、次の記事で詳しく紹介する。
痛みは、警戒していると過敏になる性質がある。
私たちは、怯えていると小さな物音にも過敏になる。普段なら気付かない物音がはっきりと聞こえる。それと一緒で、痛み刺激も、同じ強さの刺激が脳まで届くときと届かないときがある。
動いているものには反応するが、止まっているものには反応しないのも同じ原理で、優先順位の高いものに脳は意識を向ける。
しつこく述べている通り、痛みは身体からの警戒信号なので、危険が回避されないと神経達の警戒が厳しくなり、痛みを起こす発痛物質も増えるし、神経の束も、まさに痛みに神経を集中してしまうのだ。
痛いところをしっかり時間をかけて撫でると痛みは緩和する
その2. そんな過敏対策には、痛いところを優しく撫でてやると良い。
初めは痛く感じても、時間をかけてゆっくり撫でていると、その刺激が脳に伝わり、「触られても危険じゃないかも?」となり、警戒が解除される。
嘘だと思うかもしれないが、本当のことだ。
私はこれで、患者さんの痛みをかなり取っている。
私は本当に優しく撫でているのに、初めは患者さんは凄く痛がる。これのせいで私は患者さんにサド呼ばわりされることが良くあるわけだが、心を鬼にしてさすり続ける。
するとそのうち患者さんが痛がらなくなる。手を止めて動いてもらうと痛みが消えている。これは私のハンドパワーではなく、神経の仕組みを理解した上での医学的な治療というわけで、決して私がSだからではない。
もう一つの方法はテーピングやコルセット、サポーターなどで痛いところをぐっと抑えてやること。これがあると筋肉は安心して、過剰な力を入れずに済む。
次回は身体の硬い人のストレッチがテーマです。
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