症状の見分け方
(整形的な痛み)
*このページは今後加筆修正し充実させて行く予定です。
患者さんを治療するとき、施術前に必ずしなければならないことがあります。
当然のことですが、患者さんの症状から、その原因を推測すること。
この時点で病院に行くべき疾患などが疑われれば、その理由を丁寧に説明し、何科に行くべきかもお話しています。
ここでは、何をどうやって見分けているのか、症状ごとにわかりやすく解説したいと思います。
痛みがあるとき、一番最初に確認するのは安静時痛があるかどうか。
動いた時だけ痛くて、じっとしていれば痛くない。
→筋肉や関節の症状であることが推測できます。
首や肩の痛み、背中の痛み、腰痛などは、ほとんどが筋肉の疲労や炎症が原因
ぎっくり腰や寝違いのような痛みも、急激な体勢の変化などが誘発するように思えますが、実際には、筋肉の恒常的な緊張と、疲労による筋肉の余裕のなさから、特にきっかけがなくても起こり得ます。
体が元気であれば、多少無理な体勢をしてもこのような痛みは起こりませんので、疲労のサインだと思ってください。
安静にしていれば数日で症状は落ち着いてきますが、治療をすれば格段に早く症状が改善します。
肩の痛み(五十肩)や手首、膝、股関節などの痛みは、
酷使による筋肉や関節の損傷か、老化による変形が原因です。
どちらにせよ、痛みが激しい間は安静にして、まずは炎症が収まるのを待ちましょう。
痛みを起こすような動きは当面避けます。
関節の変形など物理的な変化があったとしても、無理をしないで炎症さえ治れば、痛みがそれほど長く続くことはありません。
炎症が治まったら、まずは体重などの負荷をかけずに動かすことから始めて、周囲の筋肉や関節が固まってしまわないようにリハビリを始めてください。
でも焦りは禁物です。
外出時などは包帯やサポーターで保護するのも効果的です。
患部をぎゅっと押さえることで不安感が減り、周囲の筋肉の過剰な緊張を解除できる上、関節にかかる負担を軽減できます。
ただし、長期にわたり常にサポーターに頼っていると、筋肉がサボって筋力低下を招きかねません。
痛みが改善したら、サポーターの使用は長時間の外出やスポーツをするときだけに限定しましょう。
安静にしていても痛い場合
強くぶつけた、重いものを持った時にぎくっとしたなど、痛みのきっかけがあり、特定の場所だけが痛む場合 →打ち身、ぎっくり腰や寝違い、肉離れ、靭帯損傷や骨折などが考えられます。
打ち身→内出血のみでほとんど腫れていない、あるいは翌日には腫れが引いたのであれば心配いりません。
骨折や靭帯損傷が起きている場合は、内出血を起こし、局所が熱を持って腫れ、翌日一段と腫れがひどくなります。
骨折と打ち身の簡便な区別の仕方→痛い場所と同じ骨の最も遠い所(手首が痛ければ肘の周囲、方が痛ければ肘の少し上など)をごく軽く指先などで叩いてみてください。
叩いた場所よりも、最も痛い場所の方に強い痛みを感じれば骨折の疑いありです。
ひどい捻挫で靭帯や半月板などが損傷した場合、関節が不安定になりますので固定する必要があります。
ただギブスで固定してしまうと、治療も行えず、損傷していない周囲の筋肉まで固まってしまうので回復には時間がかかります。
しつかりしたサポーターやテーピングである程度固定し、治療を続けると、回復は劇的に早くなります。
肋骨や高齢者の背骨は、容易に骨折する
肋骨は非常に薄い骨です。くしゃみやゴルフのスイングなどでもヒビが入ることがあるので、呼吸をしても胸部が痛むような場合は一応レントゲンを撮りましょう。(コルセットをして安静にしていれば自然に治ります)
老人の背骨は、軽い尻餅程度でも圧迫骨折を起こすことがあります。激しい痛みがあり、寝たきりになることも。早めの受診が必要です。
肉離れ(ぎっくり腰や寝違い含む)→動いた特に痛みが走り、動かすことが出来なくなる。
当面は安静にして、可能であれば固定します。
太腿やふくらはぎなら包帯かテーピングで圧迫するように巻いてあげます。
ぎっくり腰ならコルセットやサポーターを巻く位置を変えながら楽になる場所を見つけて固定しましょう。
(損傷した部位により、ウエスト辺りか、骨盤か、股関節か、抑えるべき位置が変わります。自分で試してください)
*痛みが激しい間は炎症期です。お風呂で温めると悪化する可能性大。
楽になりそうに思えてもリスクが高いのでやめておきましょう。
特にきっかけはなく、ある時突然痛み出した場合
安静にしていれば改善することがほとんどですが、一部注意が必要なものがあります。
1箇所の関節だけが痛む場合→五十肩、膝、股関節などの変形性関節炎の炎症期
上記の動いた時だけ痛むものと原因は同じですが、炎症が強いと安静時にも痛むことがあります。
変形の有る無しに関わらず、大抵のものは安静にしていれば痛みは徐々に治ってきます。一番は無理をしないことです。
手指の関節が腫れて痛む場合、一番指先に近い第一関節の腫れはへバーデン結節といって、中高年に出やすい関節炎です。数ヶ月痛みが続きますが、重篤なものではありません。
問題なのは、複数の第二関節が痛む場合です。こちらはリウマチ(膠原病)の疑い有り。
朝起きると指が動かしにくい。身体がだるい。他の関節も痛み出したなど随伴症状があれば早めに専門医を受診してください。
複数の関節が痛み、腫れや熱感がある場合はリウマチなど膠原病の疑い
微熱が続いていたり、貧血やだるさを伴う場合には必ず膠原病の専門科を受診しましょう。
首から腕にかけて、腰から足など、痛みの範囲が広く、
痛かったり痛くなかったりする時間帯がある場合は神経痛です
神経痛とは、今痛みを感じている場所に痛みの原因はなく、その部位を担当している感覚神経が、脊椎の出口や筋肉の下で圧迫され、損傷を受けることで起きる痛みです。
神経痛を起こす代表的なものには、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、坐骨神経痛と総称されるもの、肋間神経痛、胸郭出口症候群、手根管症候群などがあります。 肩から腕の痛みでは五十肩と混合されることがありますが、肩の動きとは関係なく痛むことや、手を下ろしたくなくて痛む腕を反対の腕で押さえたくなるようであれば、神経痛の可能性大です。
*肩の動きに関係なく運動時に起こる左肩の痛みには心筋梗塞などの可能性もありますので注意が必要です。
しばらく歩いていると腰から足に痛みが走り、休憩すると改善する→間欠性跛行と呼ばれる症状で、脊柱管狭窄症が神経痛、閉塞性動脈硬化症が血行障害によるものです。
両者を区別するのは痛みが改善する条件で、脊柱管狭窄症は神経が後ろ側で圧迫されているため前傾姿勢をとれば楽になり、閉塞性動脈硬化症は筋肉の虚血状態による痛みのため、休んで血流が回復すると痛みが軽減すると言われています。
痺れや麻痺(力が入らない、つまずきやすい、細かい動きができない)など
ここで注目すべきことは、その症状が1箇所(片腕、片足)なのか、片側なのか、両手足なのかと言うことです。
1箇所のみ、痛みと痺れが混じっているのであれば、ほとんどが上記の神経痛、末梢神経の圧迫によるものです。
四肢(特に手先や足先)にしびれがあり、麻痺はない場合。
糖尿、自律神経失調、膠原病などが疑われます。
痛みがなくて麻痺(上手く動かない、力が入らない)のみの場合、とにかくCTやMRIのある病院へ行きましょう。
脳や脊髄など中枢神経の障害や全身性の疾患が疑われます。
特定の四肢や顔面の筋肉のみで、痛みが伴うもの→末梢神経の障害。
痛みが伴わないもの→中枢神経の障害が疑われます。
片側、あるいは全身に麻痺がある場合
脳梗塞、脊髄損傷、脊髄神経の圧迫がある疾患(黄色靭帯骨化症など)
膠原病、ギランバレー、ALS、感染症、小児麻痺、重症筋無力症などの疑いがあります。
筋肉疾患
麻痺のほとんどは神経の損傷が原因ですが、ごく稀に筋肉自体の疾患が隠れていることもあります。
代表的な筋原性疾患には筋ジストロフィーやミオパチーがあり、特徴としては神経が原因の麻痺は体の中心から離れた部位、手先や足先から症状が発生しやすく、筋肉が原因のものは体の中心に近い上腕や腿などの大きな筋肉に症状が出やすいと言われています。